日本人英語学習者の中には、「英語の発音って難しい……」と感じる方が少なくありません。というのも、英語は日本語よりも遙かに多い「音」の種類を有しており、英語の発音をマスターするには、日本語にない音を正しく作れるようにならなければならないからです。
たとえば、母音だけをとっても、日本語は「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の5つだけのところ、英語には12種類以上もの母音があります。そこで今回は、英語の発音の種類と、それぞれの音の作り方を、発音記号を用いて解説します。
英語発音の種類と発音記号
冒頭でお伝えしたように、英語は、母音・子音ともに日本語と比較して音の種類が多いことが特徴です。厳密にいえば、英語がとりわけ音の多い言語というよりも、「日本語が特に音が少ない言語である」と表記する方がより正確でしょう。実際に、主要言語の音の数は下記の通りです。
- 英語:約600個
- 日本語:約70個
- 韓国語:約600個
- 中国語:約2,000個
このように、英語は日本語と比較して音の種類が豊富であるぶん、より細かな言い分け・聞き分けが求められます。
「600種類もある英語の音を覚えるのは難しそう」とハードルが高く感じるかもしれません。しかし、英語の発音はすべて、「発音記号」を用いて体言的に表記することができます。
一見スペルと発音を紐付けるのが難しいように感じる単語でも、発音記号の知識があれば例外なく正しく発音することが可能です。
英語の発音記号を学ぶメリット
では、英語の発音記号を学ぶことにはどのようなメリットがあるのでしょうか?これまで発音記号に一切触れてこなかった人からすると、発音記号を学ぶ必要性をあまり理解できないかもしれません。ここでは、発音記号を学ぶことで得られるメリットについて紹介しましょう。
正しい発音が身につく
発音記号を学ぶことのメリットの一つ目は、ネイティブに通じる正しい発音が身につくことです。英単語の発音を覚える際、「scientist = サイエンティスト」のようにカタカナ発音を当てはめて覚えたくなるかもしれません。
日本人からすればカタカナで覚える方が記憶に定着しやすいですし、「カタカナ発音でも十分通じるだろう」と思ってしまいがちです。しかし、上でお伝えしたように、英語と日本語ではそもそも存在する音の種類が異なります。
そのため、正しい発音を身につけるためには、カタカナに頼らず英語の発音を学ぶこと、要するに「発音記号の知識を身につけ、発音記号通りに英語を読めるようになる」必要があります。
リスニング力が飛躍的に向上する
発音記号を学ぶと、発音がきれいになることに加えてリスニング力も飛躍的に向上します。これは、発音記号を学ぶとそれぞれの音の作り方がわかるようになり、英語の音を聞いた時に頭の中で「音」と「文字」が瞬時に紐付くようになるからです。
たとえば、/b/と/v/の発音記号を例にとって考えてみましょう。多くの日本人は/b/と/v/の聞き分けを苦手としています。なぜなら、/b/と/v/は日本語ではどちらも「バ」「ビ」「ブ」「ベ」「ボ」の音として認識されてしまうからです。
そこで英語の発音記号を学ぶことで、/b/と/v/の音がそれぞれどのように作られているのかがわかるようになります。基本的に「正しく発音できる音」というのは「正しく聞き取れる音」ですので、発音記号を学ぶとリスニング力が飛躍的に伸びます。
英語の母音の種類と発音記号
ここからは、実際に英語の発音の種類と発音記号を紹介していきます。そもそも英語の発音は「母音」と「子音」から成り立っています。ここでは、まず「母音」の種類から見ていきましょう。
母音とは?
母音とは、空気を振動させ、口の中の空洞の広さや場所などを変えて作る音のことです。舌や唇などの調音器官は使わずに、縦笛を吹くように音が長く続きます。
日本語と英語の母音を比較すると、英語の方が母音の数が圧倒的に多いのが特徴です。日本語の母音は「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の5つであるのに対して、英語には12個以上もの母音が存在します。実際に英語と日本語の母音台形を見ると、日本語と英語では母音台形の別れ方に大きな違いがあることをわかっていただけると思います。
※上記の画像はプロンテストにて作成・研究を行い特許を取得しております。転載はお断りいたします。
英語の方が、日本語よりも母音が細かく別れていますね。たとえば、“hat(帽子)”と“hut(小屋)”は日本語だとどちらも「ハット」 と「ア」の母音で発音されますが、英語ではそれぞれ/hˈæt/と/hˈʌt/のように異なる母音で発音します。
母音の発音記号と音の作り方、ロジックについては、以下で一つずつ説明していきます。
「ア」に近い母音の発音記号
まずは、日本語の「ア」に近い母音の発音記号を紹介しましょう。
/a/
/a/ は、/ai/や/au/などの二重母音の最初の音です。イギリス英語では、/a/ の音がよく使われます。
(例)
- eye /άɪ/
- right /ɹaɪt/(※イギリス英語:アメリカ英語では/rάɪt/)
/ʌ/
/ʌ/は、日本語の「ア」の音に近い母音です。やや口を狭く開き、力を抜いて短く「アッ」と発音します。
(例)
- hut /hˈʌt/
- cup /kˈʌp/
/æ/
/æ/は、「ア」の音と「エ」の音を同時に発音したような音の母音です。口を縦に指一本が入るくらいの自然な大きさに開いた状態で、舌とあごの間隔を空けて「エ」の音を発音します。
(例)
- bad /bˈæd/
- that /ðˈæt/
/ɑ/
/ɑ/は、口を大きく開けて発音する母音です。日本語の「ア」よりも口を大きく開きますが、唇を左右に開きすぎないように、喉の奥の方から発音するのがポイントです。
(例)
- pot /pάt/
- hot /hάt/
「イ」に近い母音の発音記号
次に、日本語の「イ」に近い英語の母音の発音記号を紹介しましょう。
/i:/
/i:/は、日本語の「イ」に近い比較的発音しやすい母音です。“:”の記号は、音を長く引っ張って発音する「長母音」であることを示しています。辞書によっては、/i/という発音記号で表記されることもあります。
(例)
- feel /fíːl/
- teeth /tíːθ/
/I/
/I/は、日本語の「イ」と「エ」の中間に位置する母音です。日本語の「エ」の口の形のまま「イ」と発音するイメージです。/i:/とは、音の長さだけでなく、音の作り方そのものが異なるので注意しましょう。
(例)
- it /ít/
- pin /pín/
「ウ」に近い母音の発音記号
続いて、日本語の「ウ」に近い2つの母音の発音記号を見ていきましょう。
/u:/
/u:/は、唇をすぼめた状態で前に突き出して発音する母音です。日本語の「ウー」よりもより唇を前に突き出すのがポイントです。
(例)
- cute /kjúːt/
- pool /púːl/
/ʊ/
/ʊ/は、唇をすぼめて前に突き出して発音する母音です。日本語の「ウ」と「オ」の中間に位置する音で、「ウ」と短く発音します。辞書によっては、/u/という発音記号が代わりに使われることもあります。
(例)
- wood /wˈʊd/
- full /fˈʊl(/
「エ」に近い母音の発音記号
「エ」に近い母音の発音記号を紹介します。
/e/
/e/は、/ei/などの二重母音で使われる母音です。日本語の「エ」と似ていますが、舌の位置を低めにして、口をやや開いて発音するのがポイントです。例えば、“break”という英単語は、日本語では「ブレイク」と発音しますが、英語では/bréik/のように/ei/と発音します。
(例)
- take /téɪk/
- age /éɪdʒ/
/ɛ/
/ɛ/は、口を縦に広く開けて発音する母音です。/æ/の母音とよく似ています。日本では/e/という発音記号で表記するのが一般的ですが、二重母音の/e/とは音質が異なるので注意が必要です。
(例)
- nurse /nɜrs/
- learn /lɜrn/
「オ」に近い母音の発音記号
次に、日本語の「オ」に近い母音の発音記号を見ていきます。
/o/
/o/は、口をややとがらせて発音する日本語の「オ」に近い母音です。/ou/や/oʊ/、/oi/などの二重母音でよく使われます。
(例)
- okay /òʊkéɪ(/
- coach /kóʊtʃ/
/ɔ/
/ɔ/は、口を大きく縦に開けて発音する、日本語の「オ」と「ア」の中間に位置する母音です。音をこもらせることなく、クリアに発音することがポイントです。
(例)
- orange /ˈɔːrɪndʒ/
- sma;; /smˈɔːl/
その他の母音の発音記号
英語には、日本語の「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」のどの音にも該当しない曖昧な母音が一つ存在します。
/ə/
/ə/は、“schwa sound”と呼ばれる曖昧な母音です。唇や舌に力を入れず、脱力した状態で発音しますが、スペルや前後に来る音によって発音が変化することがあります。
(例)
- about /əbάʊt/
- year /jíɚ/
英語の子音の種類と発音記号
続いて、英語の子音の種類と発音記号を確認していきましょう。
子音とは?
子音とは、調音器官を使って、不規則な周波数振動を起こしたり空気の流れを止めたりして作る音のことです。以下のIPA(国際発音記号)の表には、子音の音声と調音器官の状態の紐付けが記載されています。「音を作る方法」「音を作る場所」「有声・無声」の3つの条件によってそれぞれの音が作られています。
※上の一覧表は弊社にて作成したものであり、転載はお断りいたします。
日本語にない子音の発音記号
上の一覧表で提示した子音の中で、特に日本人が徹底的に練習しなければならない8つの子音の発音と発音記号を確認しておきましょう。これらの8音素は日本語には存在しない、または日本語の他の音と混同しやすいため、発音練習を通してしっかりと習得する必要があります。
/f/
/f/は、前歯を下唇につけて発音する無声子音です。日本語の「ハ」「ヒ」「フ」「ヘ」「ホ」の音と混同されがちですが、/f/は必ず前歯を下唇につけて発音するので、実際の音は大きく異なるので注意が必要です。
(例)
- fish /fíʃ/
- rough /rˈʌf/
/v/
/v/は、/f/と同様に前歯を上唇につけて発音する子音です。/f/の音を発音するときと同じロジックで、声帯を震わせて声を出して発音すると/v/の音になります。日本語の「バ」「ビ」「ブ」「ベ」「ボ」とは全く異なる音なので注意が必要です。たとえば、“vest”のを/b/の音で発音してしまうと、全く意味の異なる“best”という英単語になってしまいます。
(例)
- very /véri/
- live /lív/
/ɵ/
/ɵ/は、舌の先端を上の歯に軽く触れさせて、その隙間から空気を出して発音する無声子音です。声は出さず、息だけで発音します。ちなみに「ɵ」という文字はギリシャ語から来ていて、“theta”といいます。
(例)
- theater /ɵíːəṭɚ/
- healthy /hélɵi/
/ð/
/ð/は、舌の先端を上の歯の裏に触れさせて発音する音声子音です。/ɵ/とは異なり、舌先を震わせながら声を出して発音します。日本語の「ザ」「ジ」「ズ」「ゼ」「ゾ」の音とは異なる音であることを意識しながら練習しましょう。
(例)
- this /ðís/
- they /ðéɪ/
/s/
/s/は、舌を上の歯の裏あたりに近づけ、その隙間から息を出すようにして発音します。日本語の「サ」「シ」「ス」「セ」「ソ」の音に近いですが、/s/は無声子音なので声帯を震わせずに発音するのがポイントです。
(例)
- say /séɪ/
- student /st(j)úːdn/
/ʃ/
/ʃ/は、唇をすぼめて前に突き出し、隙間から息を出しながら発音します。日本語の「シュ」に似た音です。
(例)
- sure /ʃˈʊɚ/
- nation /néɪʃən/
/l/
/l/は、舌を上の歯の根元に付けて発音する子音です。日本語の「ラ」行の音は、/l/と次で紹介している/r/の中間に位置すると言われています。多くの日本人が/l/と/r/の言い分け・聞き分けで苦戦するのは、どちらも日本語にはない音だからです。
(例)
- lead /léd/
- liste /lísn/
/r/
/r/は、舌を口の奥の方にひき、舌が口の中のどこにも触れていない状態で発音する子音です。/r/の発音を巻き舌だと思っている方もいますが、そうではありません。日本人英語学習者が苦戦する音の一つなので、正しく発音できるまで繰り返し練習しましょう。
(例)
- restaurant /réstərənt/
- red /réd/
その他の子音の発音記号
ここまでで特に日本人が重点的に練習すべき8つの子音の発音記号を紹介しました。これらの子音の発音記号と正しい発音をマスターできたら、以下の一覧表にある子音の発音記号も確認しておきましょう。
/p/(例:put /pˈʊt/) | /h/(例:hope /hóʊp/) |
/b/(例:back /bˈæk/) | /tʃ/(例:teacher /tíːtʃɚ/) |
/t/(例:table /téɪbl/) | /dʒ/(例:judge /dʒˈʌdʒ/) |
/d/(例:dog /dˈɔːg/) | /m/(例:mouse /mάʊs/) |
/k/(例:kitchen /kítʃən/) | /n/(例:never /névɚ/) |
/g/(例:game /géɪm/) | /ŋ/(例:sing,hunger) |
/z/(例:zebra /zíːbrə/) | /j/(例:year /jíɚ/) |
/ʒ/(例:usually /júːʒuəli/) | /w/(例:wave /wéɪv/) |
一覧表で紹介している発音記号は、特殊な記号が使われておらず、基本的にアルファベットの発音に準じています。とはいえ、日本語の音とイコールで結べるわけではありませんので、それぞれの音と音の作り方のロジック(口の形や舌の位置など)を覚えましょう。
発音記号を用いた発音練習方法
ここまでで、発音記号を用いて英語の発音の種類を紹介しました。それぞれの発音記号を正しく発音できるようになるには、音の作り方を頭で理解することに加えて、「発音練習」に繰り返し取り組むことが欠かせません。
基本的には、「発音記号とロジック(音の作り方)を学ぶ」→「お手本の音声を真似する(発音練習)という順序で学習を進めることをおすすめします。
ここでは、発音記号の効果的な練習方法について具体的にお伝えしていきます。
自分の発音を録音して聞き比べる
発音記号の知識を身につけ、英語の発音の種類を学んだら、現時点での自分の発音を録音して、お手本の発音と聞き比べてみましょう。自分の発音を客観的に聞くことで、「正しく作れている音」と「間違って発音している音」がわかるようになります。また、発音練習後の成果を実感しやすくするためにも、現時点での発音を録音しておくことをおすすめします。
お手本の音声を真似するように音読する
次に、ネイティブのお手本の音声を聞き、真似するようにして音読してみましょう。発音記号の学習を通して、それぞれの正しい音の作り方のロジックを把握できていると、これまで聞き取れなかった音も聞き取れるようになっているはずです。
音と意味にフォーカスしながら、練習したい発音記号を含む英文を繰り返し音読練習しましょう。
発音練習に特化した英語学習アプリを活用する
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まとめ
今回は、英語の発音の種類とそれぞれの音の発音記号、正しい音の作り方について紹介しました。英語には日本語よりも遙かに多い音の種類が存在するため、正しい発音を身につけるには発音記号を用いてそれぞれの音の作り方を学ぶことが欠かせません。
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