英語の聞き取り能力は、英会話の上達において重要なスキルの一つです。そんなリスニング力を強化するための学習方法の一つに「ディクテーション」があります。
今回は、ディクテーションの効果・メリット、そしてディクテーションで「英語が聞き取れない!」という壁にぶち当たった際の原因と対処法をお伝えします。ぜひ参考にしてください。
ディクテーションとは?
ディクテーションとは、英語の音声を聞き、流れてくる英語の文章を書き起こす勉強法のことです。主にリスニング力を強化するためのトレーニングとして用いられています。
ディクテーションは、流れてくる英語の文章を聞き逃さないように集中してリスニングする必要があるため、英語の聞き取り能力の強化に効果的です。また、英語を聞いて書き取るという作業の中で、つまずきやすいポイントを見極めることで、自分の課題を把握できるというメリットもあります。
ディクテーションの効果・メリット
続いて、ディクテーションの効果とメリットについて詳しくお伝えしていきます。
自分の弱点を把握できる
ディクテーションの一つ目の効果・メリットは、自分の弱点を把握できることです。
ディクテーションには、「流れてくる英語をすべて聞き取る作業」と「聞き取った英語を文字起こしする作業」の2つが含まれます。さらに、英語を聞き取る作業では「英語の音を聞き取る力」「英単語を聞き取る力」、英語を文字起こしする作業では「英単語を正しくスペルする力」「英文法の知識」がそれぞれ必要です。
そのため、英語のディクテーションに取り組むと、「英語の音を聞き取れていない」であったり、「英単語は聞き取れるけど、文の構造がわかっていない」であったり、「音単語を聞き取れるけど、単語のスペルが分からない」であったり、自分の弱点が明確にわかるのです。
英語学習において自分の弱点を明確に把握できることは、大きなメリットです。というのも、自分の弱点・課題が分かれば、そこをピンポイントで強化していけば良いからです。「なぜ英語が伸び悩んでいるのかわからない……」とスランプに陥っている方は、ディクテーションに取り組みましょう。
リスニング力が伸びる
二つ目の効果・メリットは、リスニング力が伸びることです。
ディクテーションでは、多読や通常のリスニング練習と比較して、音声により注意深く耳を傾け、聞き取る必要があります。そのため、ディクテーションはリスニング力を鍛えるトレーニングとして最適です。
また、上でお伝えしたように、ディクテーションには「自分の弱点を発見できる」というメリットがあります。英語を集中して聞き取る練習をした後に、「どこを聞き取れていないのか」「なぜ聞き取れなかったのか」などと原因を探ることで、自分の課題を浮き彫りにし、その後のリスニング学習に役立てることができます。
文脈から推測する力が身につく
ディクテーションの効果・メリットの三つ目は、文脈から聞き取れなかった部分を推測する力が身につくことです。
私たちは日本語で会話をする際、相手の発言で聞き取れない箇所があっても、聞き取れた部分や文脈から「こう言ったのだろう」と推測することが少なくありません。すべてを聞き取ることができなくても、文脈から聞き取れなかった箇所や相手が言ったこと推測できるというわけですね。
この文脈から推測する力は、高い英会話力を身につけるにあたって習得しておきたいスキルの一つです。
リスニングを伸ばすためのディクテーションのやり方
ディクテーションの効果・メリットがわかったところで、実際にディクテーションのやり方を紹介していきましょう。ディクテーションの基本の手順は次の通りです。
- 音声を1〜2回、何も書き取らずに聞く
- 音声を聞きながら、英語を紙に書き取る
- スクリプトと照らし合わせ、答え合わせをする
- 聞き取れなかった箇所をチェックして、「聞き取れなかった原因」を分析する
ディクテーションのやり方は、至ってシンプルです。英語の音声とスクリプトさえあれば簡単に取り組むことができます。慣れてきたら英語の音声を聞く回数を減らしたり、一度に聞き取る文章を増やしてみたりするなどして、難易度を調整してください。
また、ディクテーションでは実際に書き取る作業だけでなく、書き取った後の「答え合わせ」も同じくらい重要な作業です。「なぜ聞き取れなかったのか」「自分の弱点は何か」などをじっくり分析しましょう。
ディクテーションで英語が聞き取れない原因と対処法
ここまでで、ディクテーションの効果や正しいやり方について理解していただけたと思います。そこで次に、「ディクテーションに取り組んでみたは良いものの、英語が聞き取れない……」という方に向けて、その原因と対処法を紹介します。
英語の「発音」を聞き取れない
英文を読めば理解できるのに、ディクテーション(リスニング)になると英語が聞き取れないのであれば、「発音」の知識が不足していて聞き取れていないことが原因です。
ディクテーションでは、英語の音声を文字起こしする以前に「英語の音声を聞き取る」必要があります。英語の発音を正しくかつスムーズに聞き取ることができなければ、ディクテーションは成り立ちません。英語の発音を聞き取れていないという方は、次の対処法を試してみてください。
英語の「音」を学ぶ
まず、英語の音声を聞き取れるようになるために、英語特有の「音」を学びましょう。英語の音を学び、英語の「母音」と「子音」を認識できるようになることを目指します。
意外と知られていないのですが、私たちの母語である日本語は、数ある言語の中でも比較的「音」の数が少ない言語です。代表的な言語が有する音の数(子音+母音のモーラ)は次の通りです。
- 英語:約600個
- 中国語:約2,000個
- 韓国語:約600個
- 日本語:約70個
このように、英語が約600個もの音を有するのに対して、日本語には約70個の音しか存在しません。そのため、英語を聞き取れるようになるためには、英語特有の母音・子音の音の作られ方を学ぶ必要があるのです。
それぞれの音の発音記号と音の出し方を学び、発音練習に取り組むことで、これまで聞き取れなかった音の作られ方がわかります。これにより、認識できる音の幅が広がり、ディクテーションに必要な聞き取り能力を身につけることができます。
音声変化のルールを学ぶ
次に身につけておきたいのが、音声変化の知識です。音声変化とは、英語が自然なスピードで話された際に起こる音の変化のことです。
例えば、英語をリスニングしていると、“get out”が「ゲラウト」と/t/の音がラ行のような音に聞こえることがあります。これは、母音に挟まれた/t/の音に「ラ行化」という音声変化が起こっているためです。
これは単なる一例にすぎず、英語にはさまざまな音声変化のルールが存在します。音声変化の種類や音声変化が起こる条件・ルールなどを学ぶことで、英語の音声はずっと聞きやすくなります。
知らない単語・文法が多い
英語の発音を聞き取れても、知らない単語・文法が多すぎると英語の音声を書き起こすことはできません。ディクテーションに取り組むためには、聞き取った音を英単語のイメージと素早く紐付ける力が必要です。
ここでは、単語・文法の知識が不十分な人向けの対処法を2つ紹介します。
英単語をイメージで覚える
英単語を聞き取り書き起こすためには、語彙の強化が欠かせません。なぜなら、知らない英単語が多く含まれる文章をディクテーションするのは不可能だからです。
ただし、次から次へと流れる英語を聞き取る必要があるディクテーションでは、英単語を一つずつ日本語に訳して意味を考えている時間はありません。英単語を素早くかつ正確に理解できるようになるためには、英単語をイメージで覚えることが重要です。
例えば、“sky”という英単語を耳にした時、「空」という日本語に直すことなく、直接イメージに紐付けられなければいけません。日本語訳の載った英単語帳に依存することなく、洋書や海外ドラマ、ポッドキャスト番組などを活用して、イメージや状況などと紐付けながら語彙を強化していきましょう。
英文法を学ぶ
英語の音声を聞き取って文章に起こすためには、英文の構造や語順を理解するための「英文法」の知識も必要不可欠です。
日常会話レベルの英語のほとんどは、中学〜高校で学習する基礎文法で成り立っています。中学〜高校レベルの英文法に不安がある場合は、基礎英文法を徹底的に学び直すと良いでしょう。
すでに基礎文法の知識が入っている中上級者〜上級者には、『English Grammar in Use』などの英語で書かれた文法参考書を使って重要文法事項を復習することをおすすめします。英語学習には反復練習が大切ですし、英語で学ぶことにより、英文法の細かなニュアンスまでしっかりと理解できるようになります。
英語のナチュラルスピードに慣れていない
英語学習者向けにゆっくり話された英語の音声に慣れてしまっていると、ナチュラルスピードの英語の音声を聞き取ること、ましてや書き取ることは不可能です。ディクテーションの効果を実感するためには、まず英語のナチュラルスピードに慣れることが重要です。
日本語・英語字幕に頼らず英語を聞く
英語のナチュラルスピードに耳を慣らす方法の一つに、海外ドラマを視聴する方法があります。セリフの量が多く、日常英会話で使える実践的なフレーズが多く登場する海外ドラマは、英語のリスニング練習に最適です。
海外ドラマを視聴する際のポイントは、日本語字幕や英語字幕を表示しないことです。字幕に頼ってしまうと、英語を聞き取る力を鍛えられないのはもちろんのこと、英語を日本語に変換して理解するクセが付いてしまうので注意しましょう。
ディクテーションにおすすめの英語教材
続いて、ディクテーション学習におすすめの英語教材を3つ紹介します。
プロンテストシリーズ 発音特訓パック
「プロンテストシリーズ 発音特訓パック」は、当社プロンテストが提供するスピーキング練習アプリです。日常会話フレーズを使った会話練習をしながら、語彙を強化したり、正しい発音を身につけたりすることができます。
本アプリはディクテーションを取り組む前の下準備として、またはディクテーションと並行して英語の「発音」を学びたい人におすすめです。アプリは無料で体験することも可能ですので、気になった方は以下の公式サイトより詳細をご確認ください。
料金プラン
- 1ヶ月プラン:月額2,200円(税込)
- 6ヶ月プラン:月額1,320円(税込)
- 12ヶ月プラン:月額880円(税込)
公式サイト
TED
TEDは、世界中のあらゆるプレゼンテーションを視聴できるアプリです。自己啓発やスポーツ、芸術など幅広いジャンルのコンテンツがそろっているため、自分が興味のある音源が見つかります。
また、TEDの公式サイトでは、プレゼンテーションのスクリプトを入手することも可能です。「自分の興味あるコンテンツでディクテーションがしたい」「日常会話よりも、学術・ビジネスに関するプレゼンテーションの聞き取り練習がしたい」という方におすすめです。
料金
- 無料:アプリ内課金あり
公式サイト
LearnEnglish Podcasts
「LearnEnglish Podcasts」は、ブリティッシュ・カウンシル提供のポッドキャスト番組を無料で視聴できるアプリです。イギリス英語のネイティブスピーカーによる日常英会話の音声には、「英文スクリプト」と「エクササイズ(理解度チェックテスト)」がそれぞれ収録されています。
本アプリがあれば、ディクテーションに役立つ音声と英文スクリプト、理解度チェックテストをすべて簡単に手に入れることができます。「ディクテーションに取り組みたい」という方は、ぜひ活用してみてください。
料金
- 無料
公式サイト
- LearnEnglish Podcasts(iOS)
- LearnEnglish Podcasts(Android)
ディクテーションをする際のポイント・注意点
続いて、ディクテーションに取り組む際のポイントと注意点を紹介します。
発音練習で基礎を作る
ディクテーションの効果を最大化するためには、発音練習の「基礎」を身につけておくことがとても重要です。基礎をしっかりと作っておけば、ディクテーションの学習効率が高まり、より効果を実感しやすくなります。
これまで発音練習に取り組んでこなかったという方は、ディクテーションに取り組む前に下準備として、発音練習を行いましょう。
英文スクリプトが入手困難な音源はNG
ディクテーション用の英語の音源を選ぶ際には、英文のスクリプトが入手可能かどうかをチェックしましょう。というのも、ディクテーションを効果的に行うためには、英語の音声を書き起こした後に、「どこを正しく聞き取れていたのか」「どこを聞き取れなかったのか」などをチェックする必要があるからです。
正しく書き取れているかを答え合わせするためには、文字起こしされた英文スクリプトが必要です。英文スクリプトが入手困難な音源をディクテーションに活用することは避けましょう。
自分のレベルに合った教材を選ぶ
三つ目のポイントは、自分の英語レベルに合った教材を選ぶことです。
ディクテーションで使用する英語の音声が難しすぎたり簡単すぎたりすると、思うような効果は得られません。具体的には、英文を読んで8割くらい理解できるレベルの教材が理想的です。
また、英文の長さも忘れてはならないポイントです。ディクテーションに使用する英文は短すぎず、長すぎないものを選ばなければなりません。
初めのうちは、30秒程度の音声を選ぶと無理なく取り組めるのでおすすめです。慣れてきたら、やや長めの音声にも挑戦してみましょう。
しかし、1分を超える長文は、ある程度の英語力があっても途中で集中力が切れてしまうのでおすすめできません。ディクテーション用の音源を用意する際には、自分の英語力や集中力などを考慮しながら、自分に合ったものを選びましょう。
まとめ
今回は、ディクテーション学習の効果やメリット、ディクテーションで英語が聞き取れない原因とその対処法などについてお伝えしました。
ディクテーションは、自分の弱点を把握し、リスニングを伸ばすのに効果的な学習方法です。発音練習で「土台」を作った上で取り組むことで、さらに学習効率は高まります。
「ディクテーションでリスニング力を伸ばしたい」という方は、まず下準備として「発音練習」に取り組んでみてください。当社プロンテストでは、英語のリスニング・スピーキングを劇的に変化させる「発音」を習得するためのアプリケーションおよびサポートを提供しています。
「発音練習にチャレンジしてみたい!」「プロンテストの英語学習アプリが気になる」という方は、ぜひ当社プロンテストまで問い合わせください。
プロンテストは、定期的に発音セミナーを開催していますので、発音に課題感を持つ方はぜひご参加ください。