【専修大学 三浦先生】連続した破裂音の発音法

folder_open三浦先生の英語音声学

「破裂音」(plosive) とは,口の中で気流を一旦閉鎖して,気圧を高めてから閉鎖を開放する,子音の調音(発音)法です。圧縮された気流が放出すると破裂音が生じます。英語には,/p b t d k ɡ/ の6つの破裂音があります。

どこで閉鎖を形成しているか(調音点,調音位置)を自分で意識できるようにすると,発音練習が容易になります。/p b/ は両唇(上唇と下唇),/t d/ は舌先と上の歯茎,/k ɡ/ は舌の後方(後舌)と口蓋の後方(軟口蓋)で気流を閉鎖しています。

英語の破裂音は前後の音によって,強くなったり,弱くなったり,開放があったり,無かったりするので,音声学の知識を身に付けて,発音練習をしっかりとする必要があります。そうしないと,スピーキングでも通じないし,リスニングにも支障を来します。

破裂音の発音は,英語らしく発音できるようにしようとすると,1つでも難しいのですが,英語では2つの破裂音が連続する場合も多いので,連続した破裂音の発音法を知って,日本語なまりから脱出しましょう。

まず,<look to>(頼る)と<relate to>(共感する)を発音してみてください。

look の <k> を「ク」と発音していませんか? また,<relate> の語末の <te>(e は黙字で [t])を「ト」と発音していませんか? どんなに速く発音しても,「ク」と言ったら [u],「ト」と言ったら [o] という母音を挿入していることになり,それはカタカナ発音,つまり,日本語なまりということになります。

発音記号の「補助記号」 (diacritic) を使えば,簡単に発音矯正ができます。
補助記号を使った発音表記は「精密表記」(narrow transcription) などと呼ばれますが,発音練習のポイントがわかります。

「コーナー」(corner) と呼ばれる,かぎ括弧のような補助記号は一般に「無開放」(unreleased) のための記号として使われていますが,「国際音声記号」(the International Phonetic Alphabet, IPA) では,1989年から正式には,「不可聴開放」(no audible release) の記号と定義されました。

[k t] の破裂音連続では,[k] の破裂音は聞こえません! [k] の閉鎖が開放されるときには,後続の [t] の閉鎖がすでに生じているからです。このようなタイプの破裂音連続では,初めの破裂音は2番目の破裂音の閉鎖によって全く聞こえないのです。

日本人には気付かれにくいのですが,1語であっても同じです。次の単語の初めの破裂音は聞こえません。自分の発音で,[k] の破裂音が聞こえたら,それは日本語式発音です!

次の語句の発音を発音記号を見ながら練習してください。

それでは,<relate to> はどうでしょうか? こちらは同じ破裂音の連続です。音が重複することを geminate とか gemination と呼ぶのですが,破裂音の重複は日本語にもあります。つまる音,「促音」のことです。

「カタ」(肩)と「カッタ」(勝った)を比べてみましょう。もうおわかりですね。「カッタ」(勝った)では,[t] の閉鎖時間が長いのです。発音記号で表記するときには,[t] を2つ続けて [tt] とするか,[t] に長音記号を付けて,[tː] とします([ˈkatta], [ˈkatːa])。初めの破裂音には開放がありません。無開放です。

IPAでは,正式には無開放を表す補助記号はなく,通常,不可聴開放の補助記号を無開放の記号として使っています。

しかし,Carley & Mees (2024, p. 16) では,無開放の補助記号として,上付きの零(数字のゼロ)を使っています。IPAではありませんが,発音練習には便利だと思います。この補助記号を使って,<relate to> を表記すると次のようになります。

同書の例を使って,次の語句の発音も練習してみましょう。

調音点が同じであれば,有声音と無声音の違いがあっても,初めの破裂音には開放がありません。

自分の発音が良くなっていくことが実感できると,発音練習は楽しいですね。

参考文献
Carley, Paul and Mees, Inger M. (2024). English Phonetics and Pronunciation Practice (2nd edition). Abingdon: Routledge.

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