<英語発音のポイントを学べる>大人気『発音クリニック』5月の日程公開!(5月21日&5月28日)

【専修大学三浦先生】一般アメリカ英語のPALM母音とTHOUGHT母音

folder_openアメリカ英語, 三浦先生の英語音声学

「一般アメリカ英語」 (General American, 以下 GA) には,LOT母音 / ɒ, ɔ / がありません。すべてPALM母音 / ɑː / で発音されます。つまり,lot, hot, economy, knowledge などは「オ」ではなく,「アー」で発音します。PALM母音は長めの母音ですが,GAでは母音の後ろにある < r > を発音するために,carheart の発音ではPALM母音もやや短くなります。そのためアメリカ言語学会では,発音表記に長音記号を使いません。辞書の発音記号が lot / lɑt / となっていても,実際の発音は lot / lɑːt / ですから,合わせて気を付けてください。

母音の後ろにある < r > を発音する英語方言は,「R音性的な」(rhotic) 英語と言います。アメリカ英語はその典型で,17世紀にイングランド南西部からアメリカに渡った方言特徴をずっと維持しています。

さて,GAには2つのタイプがあることをご存じですか? thought をTHOUGHT母音 / ɔː / で「オー」と発音する地域と,上記と同じPALM母音 / ɑː / で「アー」と発音する地域に分かれます。前世紀の後半から,西海岸地域の発音がアメリカ英語の主流として広がるにつれて,THOUGHT母音が減少しつつあります。ですからアメリカ英語の練習をしている人には,LOT母音もTHOUGHT母音もすべてPALM母音で発音することを薦めます。そうするとアメリカ英語らしさが強調されます。

ちなみに英語音声学では,THOUGHT母音を保持しているGAを THOUGHT-ful GA,THOUGHT母音がPALM母音に「融合」 (merge) した(置き換わった)GAをTHOUGHT-less GAと呼びます。

それでは日本語の「オ」に近い母音がGAから消えつつあるかというと,そうではありません。THOUGHT-less GAにも日本語の「オ」に非常に近い母音が存在します。それはSPORT母音と呼ばれる母音です。R音性的な英語の特徴的な母音です。force, more, door, war などは / or /,< r > の前の母音は口の開きの小さい / o /「オ」で発音します。この母音は日本語の「オ」にとてもよく似ています。それにもかかわらず,日本人の中高生はスペルに惑わされて, war(戦争)を「ワー」と発音しがちです。これは自信をもって「ウォー」と発音してください。ただし,出だしの < w > は唇をすぼめて突き出さなければ英語にはなりません。

SPORT母音は音素 (phoneme) ではなく,異音 (allophone) なので,音素を表記している辞書の発音記号には見当たらないかもしれません。辞書の編集者も苦労して発音記号を記載していますが,英語方言学や英語音韻史の分野ではSPORT母音の音素をどのように分類しているかに触れておきましょう。

THOUGHT-ful GAの場合は,SPORT母音の音素を「オ」に近いTHOUGHT母音「オー」とみなします。これは皆さんが問題なく同意すると思います。ではTHOUGHT-less GAの場合はどうでしょうか? 疑問を持つかもしれませんが,伝統的にGOAT母音 / oʊ / として処理されています。この二重母音の第1要素がほぼ同じ母音だからです。

最後に Carley & Mees (2020, pp. 126–127) からSPORT母音に関して有益な情報を付記しておきます。SPORT母音の後ろの < r > の後に,さらに母音が続く場合の発音です。story, glory, tutorial のように,どちらのタイプのGAでもSPORT母音が使われる語群と,GAのタイプとは関係なく,個人のレベルで習慣として,SPORT母音かPALM母音のどちらかが使い分けられている語群があります。それは以下の語群です。

borrow, orange, forest, authority, quarrel, warrior, coroner, categorical,

correlate, correspondent, Florida, florist, historic, horrible, majority,

Oregon, origin, foreign, torrent, historian, corridor, priority

日常語ばかりなので,注視する必要があると思います。取りあえず,SPORT母音で発音しておけば無難ですが,言語変容(音変化)の見地から見ると,徐々にPALM母音が優勢になると思われます。言語変容の見地というのは,個人の習慣(発音)が他人に広まっていくということです。聞き手が理解の過程で修正しないで受け入れてしまう可能性が高い母音です。すでにGAでは,sorrytomorrow はPALM母音で発音することが一般的になっています。

参考文献

Carley, P. & Mees, I. M. (2020). American English Phonetics and Pronunciation Practice.

Abingdon: Routledge.

急ぎの人は発音クリニックで直接指導してもらう

プロンテストが出している学習アプリやその中の音声指導技術は、音声学をもとにしています。そのため、判定内容や指導内容にも学問的裏付けがあります。英会話スクールでは、発音記号を読めない・または読み方を知らない教員が指導している場合がほとんどです。

一方でプロンテストでは、大学の英米文学科などで指導される英語音声学に基づいて、発音記号一つ一つの読み方、調音器官(舌や歯など)の使い方を正確に指導する知見を持っています。

また、音声学はそのままだと初学者には難しいので、プロンテストは専門的な音声学の内容をわかりやすく噛み砕いて、すぐに身に着けられるような指導も行っております。

定期的に発音セミナーを開催していますので、発音に課題感を持つ方はぜひご参加ください。

関連記事

ブログ・更新情報

メニュー