<英語発音のポイントを学べる>大人気『発音クリニック』5月の日程公開!(5月21日&5月28日)

【イギリス英語 発音教材】イギリス英語発音の最新教本のご紹介

folder_openイギリス英語, 三浦先生の英語音声学

皆さんこんにちは、プロンテストの奥村(悠)です。

今回は当社の顧問をしていただいている、日本実践英語音声学会の会長であられます、

専修大学教授 三浦弘先生に、イギリス英語学習のための本と、発音の練習方法について、寄稿をいただきました。

アメリカ英語もイギリス英語も、発音をしっかり聞き取り、また発音仕分けるためには、

発音記号に注意してよく聞き、音声を発音記号表記することが大切ですね。

イギリス英語の標準発音は20世紀の終わり頃から現在までの20数年間に大きく変化しています。
特に母音の変化が顕著です。

DRESS母音(dressの母音 /e/)やTRAP母音(trapの母音 /æ/)には「下げ」と呼ばれる変化が見られます。
つまり口を大きく開いた発音に変わりました。
逆に「LOT母音(lotの母音 /ɒ/)やTHOUGHT母音(thoughtの母音 /ɔː/)には「上げ」が生じて,口の開きが狭くなりました。GOOSE母音(gooseの母音 /uː/)は調音点(舌の盛り上がった部位)が前方へ移動して複数形の geese のように聞こえることがあります。
このような変化のはじまりは20世紀中頃の GOAT母音(goatの母音 /əʊ/)からです。イギリス英語とアメリカ英語では GOAT母音の第1要素が異なることがよく知られています(/əʊ/ vs. /oʊ/)。研究者たちはこのような現代イギリス英語の母音変化を「反時計回りの母音推移」と呼んでいます。

ほとんどの参考文献には標準イギリス英語発音のことを「容認発音」(RP) と書かれていますが,RPというのはダニエル・ジョーンズが1926年に命名したものです。イングランドの上流階級となっていたパブリックスクール出身者の家庭で話される英語発音を指したものですが,イギリス国民のわずか3%にしか用いられていませんでした。それが1927年にラジオ放送開始のために設立されたBBCの発音になりました。

上流階級が国民の憧れであった時代は1960年代まででした。007シリーズの俳優ショーン・コネリーやビートルズのような一般人がスターになる時代が到来したためです。その後 RP は “posh” とか “snobbish” と批判されるようになり,少しずつRPも変わり始めました。それでもBBC放送ではRPが用いられ続け,ヨーロッパ,ロシア,アフリカ,東南アジアでの英語教育におけるモデル発音はRPでした。

現在の標準イギリス英語発音(BBC英語)は前世紀のRPとの違いを強調するために「一般イギリス英語」(General British, GB) とか「標準イギリス南部英語」(Standard Southern British, SSB) と呼ばれます。コックニーをはじめとするイングランド南部の地域方言の一部を取り込んだような発音で,敷居が低くなり,poshでもなくなりました。このような GB が習得できる,日本語で書かれた練習教本はまだ一種類しかありません。

イギリス英語音声学
ポール・カーリー,インガ・M・メイズ,ビバリー・コリンズ著 (2021) 『イギリス英語音声学』(三浦弘訳),大修館書店

本書はロンドン大学英語音声学夏期講座 (the Summer Course in English Phonetics, SCEP /skep/) の講師陣による英語音声学入門書です。ロンドン大学の SCEP は第一次世界大戦中に世界ではじめてロンドン大学に音声学科を設立したダニエル・ジョーンズが終戦の翌年1919年8月に開始して現在に至る伝統のある夏期講座です。2019年8月には100周年記念SCEPが開催されました。毎年30名前後の日本人(英語教員や大学生)も参加しています。

発音練習を効率よく進めるためには,音声学の知識,つまり理論を学習することが大切です。この本は入門書ですから,初心者にもわかりやすく英語音声学理論が説明されています。

現在のイギリス英語の解説に加えて,翻訳者による日本人向けの注釈,アメリカ英語との比較や日本語との対照が傍注としてふんだんに盛り込まれています。本文中の理論説明の中で引用されている単語や語句の発音はすべて,著者の一人であるポール・カーリー先生のモデル音声がダウンロードできます。

また付録として,原著 (English Phonetics and Pronunciation Practice, Routledge, 2018) の練習教材を活用するための詳細な解説が翻訳者によって追記されています(翻訳書の出版社にもコンパニオン・ウェブサイトが用意されています)。本文が本書全体の3分の2,付録の発音練習が3分の1という構成になっています。発音練習教材は原著のコンパニオン・ウェブサイトに 2,524ファイル(計30時間以上)も提供されていて,吹き込み者は男女ともに1997年生まれの大学生です。同じ教材に男性と女性のモデル音声が用意されています。

発音練習を効果的に行うためには,発音記号による表記(トランスクリプション)を利用することが重要です。
原著のコンパニオン・ウェブサイトからはすべての練習教材のトランスクリプションがPDFファイルとしてダウンロードできます。そして発音記号を<正確に読む>ように練習しましょう。
日本語からの干渉による余計な母音の挿入などが防げます。あるいは日本人が苦手な「四つ仮名」(「じ」「ぢ」と「ず」「づ」,室町時代以後区別が失われ始め,現代の共通語では語頭と語中,外来語で区別される仮名の発音)由来の歯茎破裂音 [d] の有無の誤りが修正できます。major /ˈmeɪdʒə/ では舌が歯茎に接触しますが,measure /ˈmeʒə/ では接触しません。

また発音記号を覚えて,自分で音声を発音記号で書き取れるようにすればリスニング力は急上昇します。話すときにも英語らしく通じる発音になります。このような音声のトランスクリプション練習(発音記号で書き取る練習)はダニエル・ジョーンズが始めた伝統的な訓練法で,ロンドン大学では ear-training と呼ばれます。

まずはできることから始めましょう。発音記号を読みながら発音練習をして通じる英語の発音を身につけましょう。この方法はアメリカ英語の音声と発音記号を使えば,アメリカ英語発音の習得にも効果があります。

いかがでしたでしょうか?

初学者の人には少々難しい内容だったかもしれませんが、ある程度英語学習をしてきて、発音で苦労されている方には、非常にためになる話だったのではないでしょうか?

また次回の投稿をお待ち下さい。

急ぎの人は発音クリニックで直接指導してもらう

プロンテストが出している学習アプリやその中の音声指導技術は、音声学をもとにしています。そのため、判定内容や指導内容にも学問的裏付けがあります。英会話スクールでは、発音記号を読めない・または読み方を知らない教員が指導している場合がほとんどです。

一方でプロンテストでは、大学の英米文学科などで指導される英語音声学に基づいて、発音記号一つ一つの読み方、調音器官(舌や歯など)の使い方を正確に指導する知見を持っています。

また、音声学はそのままだと初学者には難しいので、プロンテストは専門的な音声学の内容をわかりやすく噛み砕いて、すぐに身に着けられるような指導も行っております。

定期的に発音セミナーを開催していますので、発音に課題感を持つ方はぜひご参加ください。

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